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コラム

新型コロナ感染者数について

2021.1.11

多くのメディアではPCR陽性者数を新型コロナウイルス感染者数として報じています。PCR検査は、検査検体(鼻腔咽頭ぬぐい液、唾液、後に追加された鼻腔ぬぐい液)の中に新型コロナウイルスの特定遺伝子配列が存在するかを調べる検査です。ある条件下で特定遺伝子が検出されれば陽性と判定されます。PCR検査は遺伝子の有無を見ているだけですので、感染(ウイルスが細胞内に侵入し、定着・増殖している状態)を見ているわけではありません。つまりPCR陽性者数=感染者数ではありません。したがって以下の点について注意が必要です。

1.ウイルス暴露・コンタミネーション

体の中にウイルスが侵入した場合、前回のコラムで述べたようにウイルス量が少なければ迅速に自然免疫(マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、好中球など)が働いて細胞への侵入や細胞内での定着・増殖を防御します。ウイルスはあるけれども細胞内に定着・増殖していない状態を暴露といい感染は成立しません。しかし、検査検体の中に極少量のウイルス(感染にはまとまった量のウイルスが必要です。一説には10,000個以上必要と言われています。)や自然免疫によって駆逐されたウイルスの残骸(断片混入=コンタミネーション)がある場合、感染していなくても陽性となる可能性があります。

2.交差反応

新型コロナウイルスはRNAウイルスという部類(インフルエンザウイルスやエイズウイルスなど)に属しています。RNAウイルスは増殖時にエラーが出やすく、変異しやすいと言われています。ウイルスデータベースGISAIDによると新型コロナウイルスは約2週間に1箇所のペースで変異していることがわかっています。RNAウイルスは絶えず変異していくので、新型コロナウイルスと非常に似た遺伝子配列をもつ亜種コロナウイルスがあっても不思議ではありません。PCR検査では、土着コロナウイルス(その地域に根付いている昔から存在する風邪ウイルス)と新型コロナウイルスの遺伝子配列が似ている場合、陽性反応を示す可能性があります。これを交差反応と言います。
また過去に遺伝子配列が似た亜種コロナウイルスに感染していた場合、そのウイルスに対しての獲得免疫(感染後に獲得する免疫)はすでに構築されており、新型コロナウイルスが侵入しても、速やかにウイルスを駆逐する抗体(免疫グロブリン:体液性免疫)やキラーT細胞(細胞性免疫)が発動します。このような免疫反応を交差免疫と言います。欧米に比べて日本の死亡者や重症者が非常に少ないのは、もしかしたら交差免疫や人種(民族)特有の遺伝的な自然免疫の強さなどが関係しているのかもしれません。

3.無症状の既感染者

無症状感染(不顕性感染)で人に感染させない状態まで回復した人の検査検体にもウイルスが存在することがあります。人に感染させる可能性がないのにもかかわらず陽性となった場合、隔離対象となってしまい経済的損失は計り知れません。

4.Ct値

PCR検査はウイルスの特定の遺伝子情報を決めて、そのコピーを指数関数的(倍々に)に増やしていき、その回数(Ct値やサイクル数と言います。)で存在するウイルス量を推定する検査方法です。少ない回数(Ct値)で陽性となればウイルス量は多いこととなります。日本(国立感染症研究所 検査マニュアル参照)ではCt値40〜45以下を陽性とするとのことですが、台湾(中央感染症指揮センター発表)は35未満で設定しています。Ct値に国際的な基準値は決まっていませんが、感染症専門医からは、日本の設定値は高すぎるとの意見もあります。Ct値40〜45だと10個程度しかないウイルス(交差反応のウイルスも含めて)やウイルスの残骸までも拾ってしまい、陽性となる可能性があります。

5.検査精度

検査精度を検証するにあたって偽陽性、偽陰性、感度、特異度、陽性的中率などが指標としてあります。
偽陽性:感染していないのに陽性となること
偽陰性:感染しているのに陰性となること
感度:感染している人の中で陽性と判定される確率
特異度:感染していない人の中で陰性と判定される確率
陽性的中率:陽性(偽陽性を含む)となった人の中で実際に感染している人の確率
上記の指標全てにおいて、PCRは正確ではありません。偽陽性があるということは、非感染なのに陽性となる人がいるということになります。感度においては東京大学保健センターの報告によると高くて70%程度とのことです。また陽性的中率においては、検査人数が増えれば増えるほど偽陽性も増えるため、的中率は低くなります。つまりPCR検査をやればやるほど、陽性者は増えて、陽性的中率は落ちていきます。
またPCR陰性証明についても注意が必要です。検体採取時の特定遺伝子の有無を100%の確率でみているわけでもなければ、その後の非感染を担保するものでは決してありません。感度70%ということは、陰性であっても3割の方は陽性の可能性があるということですので、免罪符と考えるのは危険です。陰性証明があったとしても、人と会うときは大騒ぎせず、静かに楽しく食事やお酒を楽しみましょう。

6.欧米のPCR検査数

欧米では、日本よりもPCR検査を積極的に行っています。メディアでも欧米に比べて日本は検査数が少なすぎると連日報道していました。しかし、ここで重要なのは陽性者数よりも死者発生数です。こちらの方が、深刻度を理解しやすいと思います。欧米の人口あたり死者発生数は日本の実質20〜30倍(令和2年12月20日時点)にもなりますので世界から見れば、日本は非常に死者数が少ない国の一つです。ですので、欧米のようにPCR検査を充実させるよりも、症状がある人や感染が強く疑われる人に絞って検査(例:CTスキャンの診断からさらに確定診断としてPCR検査の実施、幸い日本はCT普及率が世界トップです。)を行い、偽陽性者(偽陰性者)を極力減らすことがとても大事だと思います。

7.第3波とインフルエンザ

そもそも人は寒くなると免疫力が低下しウイルスに感染しやすくなります。加えてウイルスは低温低湿の環境を好みますので、冬のシーズンには毎年のように風邪ウイルスが流行ります。今シーズンは新型コロナウイルスが宿主(人間)の取り合い(ウイルス干渉という考えです。)でインフルエンザウイルスに勝利したことで主役になり、さらにPCR検査の拡充が加わったため、今回のPCR陽性者数の第3波を形成しているのではないでしょうか?
メディアではインフルエンザとの同時流行(ツインデミック)を危惧していますが、世界各地でインフルエンザ感染者数は過去最低を記録しており、同時感染は有り得るが深刻な数まではいかないのではないかと推測しています。
ワクチンや治療薬についてですが副反応やその効果に多くの不明な点がある以上、過度な期待をせず、自己免疫力を上げるほうが安全で確実です。巣篭もりしていると、筋力も気力も衰えて免疫力が落ちていきます(フレイル状態と言います。)。過去の歴史を振り返って見ても、感染症は必ずピークアウトして収まっていきます。それまでは、外に出て、太陽を浴びて、体を動かし、人と(静かに)話して、よく食べてよく寝ましょう!ただし体調が悪い時は、外出を控えて家でゆっくり休んでください。あと口腔ケアも口の中の免疫力を上げるため、とても大事な処置です。イソジンについては、唾液PCR検査の精度や(多量に摂取すると)体に影響が出るので、緑茶や紅茶に含まれるカテキンを摂取した方がウイルス対策になります。前回のコラムで述べたように体に入るウイルス量をできるだけ減らすことがとても大事です。これらを念頭に行動すれば、桜が散る頃にはピークアウトして収まってくると思います。

本題(新型コロナウイルス感染者数)からそれますが、ACE2受容体(前回コラム参照)は低年齢層の子供には少なく、糖尿病、腎臓病、高血圧症、高齢の方では増加します。このことが子供では感染が少なく、基礎疾患を持っている方や高齢者では重症化に至ってしまう理由の一つです。昨年の新型コロナウイルスによる超過死亡者数(直接死や関連死など全ての要因を含む)は毎年流行るインフルエンザの超過死亡者数よりも格段に少ないので、このウイルスを過度に恐れる必要はなく、正しく恐れて行動すれば良いと思います。つまり感染リスクの高い人はウイルスに感染しないように、そうでない人は人に感染させないように意識をして(方法は前回コラム参照)、経済を回していきましょう。このまま自粛自粛が続くと経済的困窮から自殺者のほうが増えていきかねません。

8.PCR開発者

PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は、Kary Banks Mullis(キャリー・マリス:ノーベル科学賞受賞者)が1983年に開発したDNAの増幅方法です。そもそもこの方法は、感染症の診断用に開発されたものではありません。博士自身は2019年8月に逝去していますが、生前は繰り返しPCR検査を感染症の診断に使ってはならないと警告しています。(一方、博士はエイズの原因と言われているHIVウイルスはコッホの原則に反するとしてHIVウイルスが原因ではない、幻だと唱えた人物でもあります。)


1.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは?

2020.8.3

新型コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型:SARS-CoV-2)による感染症を言います。

●最も見受けられる症状
・発熱・空咳・倦怠感
●時折見られる症状
・味覚または臭覚の消失・喉の痛み・下痢・結膜炎・頭痛・皮膚の発
疹・手足の指の変色(川崎病様の病態)・筋肉痛
●重篤な症状
・息切れ・自発呼吸困難・胸の痛みまたは圧迫感・言語障害または運動機能の喪失

2.新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とは?

ウイルスは単体で増殖することはできません。生物の細胞に寄生(感染)し、その細胞を利用することで自己を複製(コピー)していきます。
ウイルスは極めて微小な粒子で、生物ではありません。タンパク質の外殻とその内部に核酸を含む感染性の構造体です。新型コロナウイルスは表面にあるスパイク(Sタンパク質)という偽の鍵を使ってヒト細胞表面にあるACE2受容体と結合し細胞質内に入り込み、増殖していきます。そして、さらに別の細胞に侵入し増殖していきます。
新型コロナウイルス感染症にかかった多くの重症者や死亡者ではサイトカインストーム(免疫暴走)が起きていると言われています。サイトカインストームが起きると肺塞栓、脳梗塞、心筋梗塞、下肢動脈塞栓等の血栓症を引き起こすことがわかっています。
新型コロナウイルスに関するレポートによれば、このウイルスのR0:基本再生産数(一人の感染者が治癒するまでの間に、平均何人の人に感染させるかという指標)は、1.4~2.5(震源地と言われる武漢のデータ参照)ですが、空気感染することで知られている麻疹(はしか)は12~18と新型コロナウイルスの約10倍もの感染力を示しています。従って多くの方が思っている程、桁違いの感染力を持ったウイルスではないのかもしれません。
しかし、世界規模で蔓延しているのは感染者の多くが無症状もしくは軽症者であり、いつもと変わらない生活を送ることによって、無自覚にウイルスを拡散させているからだと思います。
また、ウイルスは生物ではないので、生物に対して作用する抗生物質は効果がありません。

3.新型コロナウイルスの感染経路は?

ウイルスの感染経路は大きく分けて、@飛沫感染、A接触感染、B空気感染(飛沫核感染)があります。ただし新型コロナウイルスの空気感染についてのWHOの見解は「換気が不十分でかつ人と人が密接した屋内において空気中を漂う微粒子(エアロゾル)を介した感染を否定できない。」として、ある一定の環境下での感染の可能性を示唆するのに留めています。つまり空気感染については屋外や換気が十分であればその可能性はかなり低くなると推測します。

4.一開業歯科医師としての感覚

信州のしがない一歯科医師の感覚では、このウイルスは自身がもつ感染力よりも数で勝負を挑んでおり、自分の仲間を増やしつつ強毒化にならないよう絶妙なラインで攻めている感じがします。仮に強毒化れば感染者は重篤化し、あちこちに動き回ることができなくなります。死に至ればウイルスは寄生することができなくなり、新たな宿主を失うことになります。そして自ら消滅の道を選ぶことになります。ウイルスは生物ではありませんが、遥か昔から人類の進化に深く関わっており、共存してきた間柄です。そう簡単に宿主を手放すとは思えません。新型コロナウイルス感染者の多くが無症状もしくは軽症者ですが、そこに運悪く基礎疾患(癌、糖尿病、肺疾患など)や免疫力の低下などが引き金となってサイトカインストームを引き起こし重症化に至ってしまう、そんなウイルスではないでしょうか。

今まで人類が根絶できた唯一の感染症は天然痘のみです。新型コロナウイルスの仲間には、以前流行した重症急性呼吸器症候群(SARSコロナウイルス:2002年〜2003年)や中東呼吸器症候群(MERSコロナウイルス:2012年〜)がありますが、収束してはいるものの根絶には至っていません。このことから新型コロナウイルスはパンデミック(世界的大流行)からいずれ季節性インフルエンザのようなエンデミック(風土病)に変わっていくのではないでしょうか。
現在(2020年8月3日時点)、このウイルスに対する有効で安全なワクチンはできていません。ウイルス研究者の中には安全なワクチンができるのに数年はかかるという方もいます。今の状況では、ワクチンや特効薬ができるのがもちろんベストですが、感染経路(伝播様式)を理解し、感染しないさせないを意識することがとても大事だと思います。

5.新型コロナウイルス感染症対策

残念ながら歴史上、ある特定のウイルスを根絶することはほぼ不可能だと思います。ゼロリスクを達成するには、鎖国をして全国民が長期間の自粛をするくらいのことをしないと国内からは消え去らないと思います。しかし、これでは経済が止まってしまいます。
大抵のウイルスは数個〜数百個程度が体内に侵入したとしても感染は成立しません。この程度の量ならば、自然免疫(初期に起こる免疫反応で抗体は誘導されません)で排除されます。つまり感染が成立するには自然免疫では対処できない量のウイルスが必要となります。ウイルスをゼロにすることは非常に難しいですが、体に侵入するウイルス量を減らせば、感染リスクを大幅に減らすことができます。

このウイルスは主に飛沫感染、接触感染で伝播していきます。後述するポイントをおさえれば、体に侵入するウイルス量は減り、効果的な感染予防になると思います。

6.飛沫感染について

新型コロナウイルスの侵入門戸は、主に口、鼻、眼などの粘膜です。感染者の飛沫(くしゃみ、咳、唾液など)がウイルスと一緒に放出され、非感染者の粘膜に侵入し感染します。よくテレビでスーパーコンピューターを用いた飛沫シミュレーションが流れていますが、飛沫に含まれている全てのウイルスが感染力を持っている訳ではなく、不活化(感染力を失った状態)のウイルスも含まれていますので、実際の感染力を持ったウイルスはシミュレーション上のイメージよりは少ないと思われます。

飛沫感染を減らすには、@マスクの着用。(マスクに否定的だった欧米諸国でも着用義務化の国や地域が出てきたということは一定の効果を認めたということだと思います。)A大声を出さない。B換気を十分にする。C食事やお酒の席では静かに楽しむ。といったあたりでしょうか?

7.接触感染について

感染者の飛沫が付着した物(例:ドアノブ、共通のとり皿やトング、机など)に触った手で口や眼などを触ると感染します。

接触感染を減らすには、@消毒用70%エタノールでまめに手指消毒する。(新型コロナウイルスはエンベロープという脂膜で覆われています。消毒用70%アルコールはこの膜に作用し、ウイルスを不活化させますので有効です。)A消毒用エタノールがない場合は、こまめに流水で手洗いをする。B消毒をしていない手で顔を触らない。C食べ物はあらかじめ個々に取り分けておく。D回し飲みをしない。といったところでしょうか?

8.口腔ケアと新型コロナウイルス

新型コロナウイルスは前述にある通りACE2受容体と結合し、細胞内に入り込みます。

舌の粘膜にはこの受容体が豊富にあります。そのため、口腔内からの感染率は高いと思われます。味覚異常が起きるのもこのことが関係しているかも知れません。口腔内の衛生状態が悪いと免疫力が低下するため、感染の可能性が高くなります。従って口腔ケアは不要ではなく必要な処置ですので、積極的なケアをお勧めいたします。

ポピドンヨード(うがい薬)が有効との報告について:ポピドンヨードは歯科においてもよく使用されるポピュラーなうがい薬です。たしかに口腔内での消毒効果は認められますが、全身に感染している新型コロナウイルスに効果があるかは疑問です。この報告によると唾液PCR検査で判定したとのことですが、専門家からはヨードが試薬に含まれるPCR酵素(タンパク質)に影響を及ぼす可能性があると指摘しています。口腔内で採取した唾液の中に残存ヨードがあった場合、エラーを誘発し偽陰性(陽性にもかかわらず陰性の値を示すこと)を示す可能性を否定できません。唾液中のウイルス量が減少しているからといって全身に感染しているウイルスに効果ありとするのは些か危険な気がします。ヨードの過度な使用は口腔内の粘膜を傷つけたり、場合によっては甲状腺にも影響を及ぼします。使用目的に対して用法容量を守り適切に使用するべきだと思います。ただし、感染者の唾液中の活性ウイルス量はおそらく減少すると思いますので、人に移さないという観点に絞ればメリットはあると思います。あと買占めなどマスクの二の舞にならないよう冷静な判断が必要です。

9.感染予防啓発ロゴ

長野県マスコットキャラクターのアルクマを使用した感染予防啓発ロゴの許可を長野県より頂きましたので、ホームページ及び院内掲示に利用させて頂いています。

2020年8月8日 更新

診療時間 土曜日午後も診察してます

診療時間

  • 12:30〜14:00は往診を行っております。
  • 日曜日・祝祭日は上伊那口腔保健センターにご連絡ください。(午前のみ)

〒399-4431 長野県伊那市西春近5149-2(JR沢渡駅 徒歩2分) MAP >>

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